むっかしーむっかしー古泉はー。 「おや、また女の子がいじめられていますね」 彼の名前は古泉一樹。どこにでもいるしがないサラリーマンエスパーだ。 そんな彼は懲りずにも今日、ちょっとどんよりとした曇天の下、獲物を求めて町に来ていた。 高層ビルが似合うヒートアイランドな男を物色していたのである。 しかし見つけたのは、頭の悪そうな男にいじめられている女の子でした。 無視しよう。 というか男の尻がちんけすぎて絶望です。 そう考えた古泉でしたが、やはり女の子を助けてあげることにしました。 一年に一度くらいなら人助けもいいでしょう。 久しぶりにアナルに戻ってきた筆者の都合で、古泉はありもしない偽善に突き動かされたのです。 「おい、そこの君。その貧相で真性のガチホモですらムラっとこない腕を放したまえ」 「わ? わんだわめーは? わわわいめにわいわうわわったらわせろ!」 やたらWAWAWA言う男にさすがの古泉も危険な香りを感じましたが、 何を隠そう彼はホモ派ゲイアッー拳の達人です。この程度の相手、恐れることはありません。 「あまり僕を怒らせないほうがいいですよ」 キリッ! 「わに? わにわけのわからないわとわってわがる!」 「WAWAWAうるさいんですよ! ええいわからずやめ! アナルのしわにしてくれるッ!」 括約筋から光を放出しつつ、古泉はアナルにオーラエネルギーを集中させました。 するとなんということでしょう! WAWAWA男の股間が膨らみだしたかと思うと、ワッー! という叫びとともに彼は射精してしまったのです。 フフ、と汗臭い笑みを浮かべて、古泉は呆然としている男に告げました。 「これこそ究極奥技、遠隔前立腺マッサージ、アナルキモチエエシコシコなり!」 「わみわせんでしわー!」 人間としてのレベルの差を感じ取った男は、ひょこひょこ退散していきました。 「準備運動になりませんでしたね……」 後姿を見送ることもなく、古泉はかっこつけました。ブヒヒ、僕ってやっぱりイケホモ!(イケてるガチホモの略) 自分のかっこよさに勃起していた古泉に、おずおずと声がかけられました。 「助かりましたぁ、ふみー。どうもありがとうです」 WAWAWA男にいじめられていた女の子です。 あからさまにほっとした表情で、どでかい胸を撫で下ろしていました。 人間としての危険度でいえばWAWAWAよりも古泉のほうがダンチで上なのですが、 彼女の中では一応「助けてくれたいい人」ということになっているようでした。 まぁ僕は女にはまったくこれっぽちも興味ないんですけどね。 古泉は「いえいえどういたしまして」と普通の人間ぽく受け答えしながら、 そういえば以前海岸で助けたような気がする女の子に似ているな、とそんなことを思いました。 「あの、あなたのお名前は?」 「僕のような男に……いえ、そうですね。ヒートゲイ古泉。人は僕をそう呼びます」 「ひーとさん? 外人さんなんですね!」 「確かにイチモツは外人サイズだとよく言われますが」 自分のどこをどう見れば海外人種に見えるのか古泉には理解できません。 どうやら頭の悪いのはいじめられていた方もらしいですね。 そんなことを考えつつ、古泉は長居は無用と決めました。もとより女と話すこの時間の無意味さといったら! 「それでは僕はこれで。ヒートアイランドな渋い男を探さねばならないので」 「ひーとあいらんど?」 はえ? とあほの顔で首をかしげる女の子に苦笑いしつつ、古泉はきびすを返しました。 が、しかし。 「あ、まって、まってください!」 「はい。待ちましょう」 女の子が追いすがります。 お礼とか謝礼とか恩返しとかいうキーワードを瞬時に想像して、古泉は立ち止まりました。 もらえるものやしてもらえるものは全部受け取るのが彼のモットーなのでした。 ですがそういう事など滅多にないので、彼はセルフフェラの練習をして悲惨な目にあったのです。死ねばいいのに。 「ええと、じつはわたし迷子なんです」 ガガガ文庫しかし、女の子の小さな唇から出た言葉は古泉の期待を裏切るものでした。 なんとまあ、やれや――、おっとこれは僕が使ってはいけない言葉でした。 古泉は勃起していたチンコを萎えさせつつ、改めて女の子の姿をじろりべろり眺めました。 高そうで清潔な衣服に、正常な男ならウハウハしそうな体つきに、目鼻立ちです。 なるほど。確かにこんな町の中でもスラム臭い場所には不釣合い。 「アッー、そう」 だからどうしたんですか。 本格的に女の子がどうでもよくなって、古泉は屁をかましつつ鼻をほじりました。ちょっとウンコでた。 そんな古泉の変質者チックな挙動に気づかないのか、女の子は懸命にしゃべります。 「おねがいします。どうか道案内してくれないでしょうか」 手と手を合わせて瞳をうるうると。 保護欲と征服欲を駆り立てられそうな女の子の姿に、しかし古泉は、 「ばーっかじゃねえの?」 パンツに感じる温かみにうっとりとしながら、ヒストリエそんなことを言います。 ひあう、と女の子は泣きそうになってしまいました。いえ、少しばかし涙がぽろぽろと。 「うぅ、おねがいしゅましゅ……お礼なら、えと、このぶたさんきゃんでぃーを、」 「ばーっかじゃねえの?」 パンツに感じる温かみに勃起しながら、再びそんなことを言います。 フリスクなら百歩譲って道案内引き受けていたというのに、ぶたさんきゃんでぃーとはFUZAKETERU! 獣姦に苦い思い出がある古泉は、ぶたとかうしとか机とかに拒否反応を起こすのです。 「しょんなあ……」 ついに女の子はえぐえぐと本格的に泣き出してしまいました。 うざいですよこのファッキンビッチ! と、古泉がいい加減ぶちきれようとしたその時です。 「まてーい!」 「な! 誰ですか!」 突如として響き渡った勇ましい声に、古泉は周囲をすばやく確認しました。 しかし、声の主らしき人物はどこにも見当たりません。 警察だったらDOしよう、と金玉を震わせて焦る古泉に、なおも声がかかります。 「まてまてまてーい! この変質者! かわいらしい女の子を泣かすたぁ、どういう了見よ! そんな短小、高洲クリニックが許してもこのあたしがゆるさなーい!」 とうりゃー! そんな叫びと共に、古泉の目の前にその人物は現れました。 どんな超能力か宇宙力か未来テクノロジーか。 さっきまで何も無かった空間に、衝撃も音もなく颯爽と参上です。 「き、きさまはーっ!?」 その不思議現象にではなく、古泉は現れた人物に驚愕しました。 忌々しくまがまがしいその姿、ガチホモである彼が忘れるはずがありません! 「S! 正常な O! 男の女のお付き合いを S! 推進する涼宮ハルヒの 団! 団長! 涼宮ハルヒここにけんざーん! なーんかこの世に存在してはならない匂いと雰囲気と存在感がすると思って着てみれば…… やはりあんたねこの真性ガチホモど変体古泉一樹! 今日こそ成敗してくれるわ!」 「いつも言ってますがSが一個たりないでしょおがぁぁぁ!」 「うっるさーい!」 僕はMですけど! 古泉は渾身の力で突っ込みましたが、ハルヒは切って捨てました。 言われんでも無理やりやっちゅうのはワイがようわかってまんねん! 汚物を見る目で古泉を睨み付けたハルヒは、むきーとした表情で腰に手を当て指を指し、改めて正義を口にします。 「ホモが好きとか人間としておかしいのよ! ゆりもだめ! BL? なにそれおいしいの!? 天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ! このSOS団、団長涼宮ハルヒの名において、正常なお付き合い以外認めない! さぁ、いざ、さぁ! 大人しく地獄へ落ちろこのどへんたい!」 「うぬぬぬ、言わせておけば!」 古泉は怒りでチンコが分裂しそうなほどアナルに力を込めましたが、悔しいかな彼女のほうが正常なのです。 ええ! 確かに僕は自他共に認めるヘンタイですよ! そうですともいいとも! 世界の、人類の、綿々たる生の歴史、男女の営みことわりから外れた存在ですよ! ダダダダッシュ! だけどおおお! 「同性でも結婚できる国もあるんですよ!」 「そんなものあたしが滅ぼしてやるわ!」 「いつものごとくなんて傲岸不遜な! 世界があなた中心に回っていると思うな!」 「世界からはみ出たやつが何をいうのよ!」 けんかはだめでしゅよー、と蚊細い声があがりますが、ヒートうpした二人が聞き入れるはずもありません。 そして、沸点が低いのはもちろんハルヒのほうなのでした。 ムキー(トスはかっこいい)とした表情を一転、きりりと引き締めると、腕を組んで余裕の笑みを浮かべます。 「今日はいきなりクライマックスでいかせてもらうわ」 「――なんです、と」 古泉の裏筋にぞわっとした悪寒が走りぬける……! ンキモチエエ! いやいやいかんいかん、ゲイアッー券ぶっかけ男優射精コントロール! すんでの所で衝天するのを食い止めた古泉ですが、嫌な予感は確実な嫌な現実に変わるのでした。 「お出でなさい、SOS団したっぱ兼雑用係り兼副団長兼あたしのこ、ここここいびと、キョン! このどへんたいに正常な男女のお付き合いってやつを教育してやるのよ!」 キョン (男) 本名不詳 年齢イマイチ不詳 以下古泉一樹の「僕のソウルフルハートキョンたん大辞典」より抜粋。 その笑顔は地上に舞い降りた天使のよう……あぁ、君の事を思うと今日もオナニー世界記録を樹立してしまう! 一目その御身姿を拝見した瞬間から無限に愛しています! 愛しているだなんてものじゃない! 僕の生きる理由なんだ、あなたが! あなたを僕のものにできるのなら、僕は大事にしているメンコだって捨てる! 壊さないようそっと抱きしめたい。溶け合ってしまうくらい強く抱きしめたい。 唇が! アナルが! 全部、全部、全部、いとおしいんだあああああああ!! きめえ。 「やめろおおおおおおおおおおお! キョンたんのことはぜひ視姦したいですウヒヒだけどやめろおおおおおお!」 こんなことなら人助けなんてするんじゃなかったオーマイガオーマイガ! 古泉は声帯が爆裂して括約筋が避けてウンコがおいすー^^てな雄たけびを上げますが、 不思議にでもなんでもなく、こそっとビルの陰から姿を現したキョンは、恥ずかしそうな顔でハルヒの隣に並びます。 「はぁ……」 そしてどでかいため息いっぱつ。 彼にとって今の状況は心労を増やす以外なにも得るものがないのでした。 真っ赤な顔で「人前で恋人宣言しちゃったーきゃーきゃー!」などと騒いでいるハルヒは可愛いのですが、 「ちょっとかわいいな」うわやべ声に出しちゃった。 「ば、ばか、何いってのよあたりまえじゃない!」 「いちゃいちゃするなああああああああ! くそがあああ」 それを上回って余りあるほどに古泉に対して良い思い出がないので正直見たくもないのです。 現に古泉はキョンが現れた瞬間に勃起し、視界に納めた瞬間にさらに勃起し、 ハルヒの隣にならんだ瞬間に勃起し、キョンがため息をついた瞬間にさらに勃起しているのです。 今では、チンコのほうが大きくなりすぎて、そっちが本体になってしまっています。きめえ。 キョンでなくとも正直見たくもないその姿にバビった女の子、もうめんどくさいんでみくるでいいやが、 あひぃ、なにあれぇ、と本能的にヤバさを悟ったその時です。 「またんかーい!」 「なっ、この声はー!」 今度はハルヒが驚く番でした。 この声には覚えがあるぜ! いつもいつも無表情で無口で本とパソコン以外に関心を示さないと思っていたら、 あたしがキョンと付き合いだしたその日からキャラが豹変して「宇宙なめんな」とか言い出したあの子の声だわ! そのくせキョンの前ではちょっと常識知らずな子で通してて、保護欲そそってるのが見え見えなあの子! 「出てきなさいよ!」 かわいいと言われてもじもじしていたハルヒですが、ささっと周囲を見渡したり――はしません。 声の主はいつもどこからともなく現れて、ラブい二人の邪魔をするのです。 「そのお付き合い、人類全部が認めても宇宙全部が認めない! そしてなによりわたしが認めない! 一分長門? ふっざけんなわたしは作り出されたそのときからたった一人の貴方のもの! すっずみやはるひいいいい! その浮かれたお花畑な脳みそを今日こそ修正しちゃらああ!」 「あんたはさびしく図書館で本でも読んでなさいよー!」 そんなハルヒの言い返しにめげることもなく、とうりゃ! と時空の歪から音も気配もなくそいつは姿を現しました。 いやーほんと宇宙とか情報って不思議ですね。 「宇宙広しは情報統合思念体に咲いた一輪の白つめ草! メガネスキーなその他大勢を泣かせたのは今はもう遠い記憶、可憐に優雅に儚げに! チャーミングにナガモンってよんでね、長門有希ただいま推参!」 「んお?」 と、キョンが反応しました。 出てくる方法にちょっくら驚いていた彼ですが、割とこういう不思議には慣れっこなので立ち直りが早いのです。 「……長門? おまえ、そんなキャラだっけ?」 「え、あ、いや、しまっ……! ――ゆ、ユニーク」 決まったわ! とかっこつける事に夢中になっていた長門は、キョンにそういわれて我に返りました。 あぶないあぶない。ばれてないばれてない。 「なんだ、いつもの長門だ」 ははは、ごめんな。 はにかみながら謝るキョンにめきめきときめきな長門ですが、ハルヒにぶっこぉすぞ! と睨まれて再び我に返ります。 「……わりと」 「このあほんだらけー!」 本性に気がつかないキョンも! うっかりすぎる有希も! 何でばれないの気づかないの。おかしいわよおっかしいわよー! 姫路でおかしの博覧会開催中! 「フフフ……あまりに僕を無視するんでね、いやあ、ちょっと勃起してしまいました」 「うるさい」 「……じゃま」 おかしいなぁ僕が主役なはずなのに! 古泉は悔しくてさらに勃起しました。 放置プレイも大好きなので、おまけで勃起します。 キョンのはにかんだ顔で勃起限界を突破したと思っていましたが、まだまだ先がありました。驚きですね。 「で、何の話だっけか?」 この中で一番の常識人なキョンは、チンコそのものに成り果てた古泉に怯えるみくるを介抱しつつ、もっともなことを言いました。 ありがとうございましゅー。 いえいえ、お安い御用ですよ。 そんな言葉と二人の姿にハルヒと長門はうーん、と額に青筋をおったてて、 「そのあたしよりおっぱい大きい女の子を有希と二人でぼっこするっていう話?」 「そう」 「いや、違うだろ」 「チンコとして僕も賛成なんですがね、ちんこ」 あんたはひっこんでなさーい! やめて石投げないで! でも石が痛い痛い痛くてキモチイイイイイイイイイ! 全力投石を終えたハルヒはとりあえず可及的速やかにみくるをキョンからひっぺがしつつ、 えーとなんだっけかしらとちょっと前の記憶を掘り返して、ぽこぺーん! と閃き、もとい思い出しました。 「へんたいと有希のせいでうやむやになるところだったわ! 元はといえばそう、そうよ! あたしはSOS団として正常な男女のお付き合いの姿をキョンと実践すべく、」 「あなたと彼では不釣合い。正常ではない。抗議する抗議する断固抗議する」 「古泉火山爆発射精ィィィ!」 ザーメンドコンドンドコドコドーン! まつりじゃあ! 見たらだめ見たらだめ見たら人間として終わる人間として終わる。 心の中で強く決意しながら、ハルヒと長門は困り顔でお得意のやれやれをかましているキョンに近づきます。 「キョン、えと、だから、そーいうわけだから」 「うん?」 「……正常な男女のお付き合い」 「ああ、で、俺は何をすればいいんだ?」 こんなカオスな状況でなぜこの二人は真剣なんだろうと悩みつつも、一秒でも早くこの空間からさっさと抜け出したいので、 キョンは俺にできることなら、と軽く胸をたたきます。 もちろんそんな彼は軽い気持ちなのですが、二人の目は残り一個のこてっちゃんを狙う飢えた子供の目でした。 相手への敵愾心とかプライドとか恋心とかがブレンドされていて、童貞なら目があっただけで筆が下ろされてしまいそうです。 「正常な男女のお付き合いといえば、ほら、あれよ」 「……そう、あれ」 「あれ?」 そんな二人の様子にちょっとどきどきしつつ、キョンは尋ねます。 ハルヒと長門はすうっと息を吸い、同時に言いました。 「き、キス!」 「て、手をつなぐ!」 ――しまったぁ! とはどちらの心の雄たけびでしょうか。 けれど互いに共通する気持ちといえば、何ぬかしてんだこのアマ! 「手を繋ぐぅー? 中学生じゃあるまいし、どんだけプラトニックなのよ有希、おーほほ!」 「……すぐに卑猥なことをしようとする。売女」 「ぬわんですって!」 「なに?」 竜と虎のオーラを噴出させつつ、二人はにらみ合います。 チンコが「フフフ……僕なら公衆便所に行くところからはじめまアッー! 石が痛い!」きめえ。 「おいおい、喧嘩すんなよ」 ほとんどゼロ距離。額と額をくっつけあってガンのたれあいをかます二人をキョンが宥めますが、 「こんの根暗女」 「……自己中心的娘」 ハルヒも長門もまったく聞く耳もちません。 舐められたりかまれる耳はあるのですが、それは恥ずかしくて言い出せないのです。しらんがな。 「ぺちゃぱい」 「……そこの彼女から見れば、あなたもそう」 どうやら胸の話題はどちらかの逆鱗に触れたようで、ボディの殴り合いが始まりました。 えぐりこむようにうつべし! ぐえっ。 えぐりこむようにうつべしうつべし! ぐええっ。 えー。わたしそんなにおっぱい大きくないですよ……? ぶっこぉすぞこら! ぐぎょ。 マジでぶっこぉずそおら! ぐげぎょ。 お互いに正確に肝臓を捉えるその勝負にキョンは薄ら寒いものを感じましたが、彼とてちょっとひねくれてはいますが年頃の男なのです。 可愛い女の子がガンたれ合い殴りあうだなんて光景を何時までも見ていることが出来るはずもなく、 「……やれやれ」 もはや彼を構成する重要な要素のひとつといっても過言ではないお決まりをかまし、 「むんっ」 「ちょっと、何すんのよ!」 「……やめて」 そんな二人の抗議の声を無視しつつ間に割って入り、互いをひっぺがします。 当然もう少しでアバラをいけてたのに! な二人は不満顔でぶーたれようとしますが、 「ほら」 「……あ」 長門はキョンに手を奪われ、急なふれあいに驚くのもつかの間。 さらに――指と指を絡ませる恋人つなぎをされたので、もういろんな事がぶっとんでしまいました。 「ゆ、――ユートピア」 びっくりするほど! とは心の中でだけ呟いて、長門とキョンを呆然と見つめるハルヒに勝ち誇った余裕の笑みを向けます。 「き、キョン! あんたちょっとなにやってんのよ離しなさいよ離れなさいよ!」 当然沸点が水の4分の1くらいしかないハルヒはムッキー(トスはシェリル派です)と怒り狂い、 力ずくで二人の手を引き離そうと詰め寄ろうとします。しかしすんでのところで、 「ハルヒ」 「あによ!」 キョンの方からすっと一歩歩み寄り、 「……その、目ぇつぶれよ」 「はぁー? あんた何言って、……ていうか待ってそれはちょっと待って、そりゃしたいけど嬉しいけど心の準備が、」 まだなの――と、言い切らぬうちに。 彼女にしては珍しくあたわたふたふた真っ赤な顔で軽くぱにくっている間に、キョンの指がそっと頬に添えられて。 せめて目はつぶるんだからー! と最後にハルヒが意地を張った瞬間、 「ん」 唇同士の距離がゼロになって、吐息が混じってたったひとつの言葉になっていました。 やめてぇええええええええええええ! キョンたんの純潔があああああ! ……で、――ディストピア。 あわわわ、わー、きゃーきゃー。 「はぁ」 触れていたのはほんの一瞬ですが、それがとても長い時間に引き延ばされたような気がして、 ハルヒは息苦しさを感じて大きな呼吸をひとつ。 顔が完全に離れた気配を感じ取ってから、目を開けました。 その先には、自分以上に恥ずかしげな表情でいつの間にか長門と手を離しているキョン。 「……っ、」 ハルヒはかける言葉がみつからなくて、二度三度口をぱくぱくさせて結局閉じました。 言葉は見つかりませんでしたが、彼が”こう”した理由に察しがついたからです。 その察しどおりに、キョンはこほんと咳払いをひとつ前置きにして、 「あー、うん。こ、これで良いんだろ。……その、正常なお付き合いがなんとかのあれ」 キョンデレだ! オオサンショウウオよりも珍しいその姿に、ハルヒも長門ももう怒る気力を削がれてしまいました。 そして、この書いてる筆者もよくわからない騒動の源しずかである古泉は、 「そんなああああああああ! いやああああああああ! もうやだ! こんなのアナルじゃない! おうちかえりたいいいいいいいい! ニコニコでキング・ゲイアッー見ないと死んじゃううううううう!」 もうだめじゃあ! 森のおわりじゃあ! クイズミリオネアで二問目くらいの簡単な問題でうっかりミスしちゃったよう! くらいの勢いで顔面を蒼白に、括約筋を肉ばなれさせ、アナルを脱腸させて、いやいや、とチンコを振り乱します。 尿道に残っていたザーメンがあたりに撒き散らされて、これはひどいことこの上なしです。きめえ。 「う、うん。そう、そうよ、これよ! これこそSOS!」 しばらくぽやーんとした顔で唇を指でなぞったりうふふ、など桃色花畑していたハルヒですが、 そんな古泉の酸素を消費するのに金を払えよこのゲスな醜態に本来の目的を思い出しました。 「男女」と書かれた腕章をもやしもんっと右腕に装着し、直視しないように気をつけつつ古泉を指差します。 「これでわかってでしょう、どへんたい! これこそ男女の人類の正しいお付き合いの姿! さぁ、いざ、さぁ! その腐った脳みそにぐっさり刻みこんだら、とっとと現実へおかえりなさい!」 ハルヒの後ろでは長門が自分の指を頬にすりつけ、 キョンがあまり描写されなくていじけているみくるをよしよしと慰め、 長門がみくるを殴ろうとしてキョンに止められ、 そんなキャラじゃないだろユニーク! ふえええー。 みたいな事をやっています。 「げんじつ……?」 古泉は四人の姿をチンコに納めつつ、悄然と呟きました。 むっかしーむかしーの記憶っぽいものが蘇ります。 確か自分は、ああして何だかんだみんなの世話を焼く彼の手助けをしていたような―― 赤い玉に変身して、かっこよく巨人と戦っていたような、オセロや将棋でいつも負けていたような―― 孤島の偽装殺人事件を演出したり、そこそこイケ面として学校でちやほやされていたような、そんな記憶です。 今の「ブヒヒ!アナル! アナル!」と日本海が似合う渋い男を物色して、セルフフェラの練習をして死に掛ける自分。 そんな自分がとってもカオスでシュールでアナルで、まるで本当の自分じゃないような感じ。 「ようやく気がついたようだな」 「あ、あなたたちは……」 古泉の世界がザーメン色もとい乳白色に包まれました。 彼の周囲にぼんやりと浮かび上がる人影。 それは、彼の良く知ったアナルな仲間たちです。 「新川さん、山根君、岡部ティーチャー……」 共に校舎のガラスを全裸で突き破り、みんなの前でアナルダンスをかましたり、 校舎のガラスを全裸で突き破り、みんなの前でガチムチホモゲイ劇場を公演したり、 全裸で以下略――な事をやってきた、カオスでアナルな戦友たち。 彼らは皆一様に菩薩様のような笑顔を浮かべて、しかもきちんと服を着て、やさしく古泉を見守っています。 そんな慈悲にあふれた、何もかもをも包み込む博愛の極みのごとき表情に、古泉は悟りました。 「やっぱり、やっぱりそうなんですね! 僕はベテラン尻穴使いなんかじゃない! 機関でアルバイトしつつ、普通の高校生をしつつ、キョンたん、いえ、彼の親友をして、 涼宮さんを監視して、他の勢力の魔の手から守り、神人とかっこよく戦って、すいません、 自分でも支離滅裂なことを言っている自覚があるのですが……とにかく本当の僕はハンサムスマイルな彼の親友なんだ!」 言葉は感情となって、彼の双眸から涙を溢れさせました。 はっきりと思い出せます。どんな種類のボードゲームをしても勝てなくて、でもそれが楽しかったあの日々! おお! 神よ! 涼宮さんではなくて、本当の天にまします神よ! ありがとうございます、思い出させてくれて! ありがとうございます! 古泉は滂沱しながら、見えない何かに感謝しつづけました。 独白の間も、そうしてお礼の言葉をつむぐ彼をもやさしく見守っていた三人は、自愛に満ちた声音で―― 「ばーっかじゃねえの?」 いつの間にかフルチンな姿で、ちゃんちゃらおかしいわ! とヒストリエそんなことを言いました。 「え、え――?」 古泉はもちろん何がなんだか分かりません。 フルチン? なんてお下品な! そういう普通の感性で、目の前の出来事を受け止めます。 スーパーダッシュ文庫しかし、三人はイカ臭く二カッと笑い、 「ばーっかじゃねえの? お前にはアナルしかない。俺たちにはアナルしかない。むしろアナルが俺たちなんだ。 アナルがアナルなんだ。プリンとか関係ない。カオスでシュールでアナル。 さびしく一人ハッテン。獲物を見つけて公衆便所ハッテン。ヘテロハッテン大嫌い! それが俺たちだろうが! なにとち狂ってるんだ、このアナルのしわにもおけないやつめ!」 「おう、おおう、おう……あ、アッ、アッアアアッ、アッー!」 色んなもしかしたら大切なものがガラガラと音をたてて崩れていくのを自覚しながら、 古泉は括約筋にオーラパワーを終結させて、うらすじが引きつるほどの叫びをあげました。 「ですよねー! 僕がそんな普通の人間のわけないですよねー! いやー、ははは!」 ボードゲームなんかよりセルフフェラの練習をしたり、オナホールと結婚するほうが楽しいです! ブヒヒ! なぜって僕はイケホモだから! 「そうだ! それでいいんだ! これからも良い尻穴使いをよろしく頼むぜ!」 きょーうもアナルが引き締まるーケツ毛をまきこみひきしまるー。 そんななぞの歌とどうしようもない笑顔を残して、彼らは消えていきました。 同時に、ザーメンよろしくな世界を消えうせて、元居た世界が戻ってきます。 「……」 古泉の視線の先には、青臭く汚らわしく男と女でらぶい事やってる四人組。 その中の一人――いとしのキョンたんに焦点と体の全神経を集中させて、古泉は勃起しました。 勃起した勢いで、アナルからメタンガスを放出し空を飛びます。 そして、驚く四人を尻目もとりアナル目に、いつものようにこう叫ぶのでした。 「キョンたあああああん! ほっらしてえええええ! 僕と一緒にハッテンハッテン! ためしてハッテーーン!」 〜古泉トゥルーEND〜 |
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